CAR-T細胞を用いた免疫療法は血液がんで顕著な効果を上げてきましたが、固形がんでは腫瘍への浸潤不足や有害な副作用、腫瘍が標的タンパク質を失うことで生じる抵抗性、さらに患者ごとに新たな細胞設計が必要な点が問題でした。従来のCAR-Tは抗原結合部位が固定され、単一の腫瘍タンパク質だけを標的にしていました。
この課題に対し、シカゴ大学の研究チームは標的化と攻撃の仕組みを分離するモジュラー型システム「GA1CAR」を設計しました。改変した免疫細胞は専用のドッキング部位を持ち、そこに短命の抗体断片(Fab)が可逆的に結合します。Fabが結合している間だけ細胞は活性化し、Fabを投与しなければ細胞は不活性のまま残ります。Fabは循環半減期が約2〜3日と短いため、投与をやめれば患者から細胞を除去せずに治療を一時停止できます。Anthony Kossiakoffはこの仕組みを「プラグアンドプレイの装置のように機能する」と表現しました。
動物モデルでは、乳がんと卵巣がんに対して異なるFab断片を用いることでGA1CAR-T細胞が腫瘍を見つけて攻撃しました。GA1CARは従来型改変細胞と同等かそれ以上の効果を示し、同じ標的に対してより強い活性化と多くの炎症性サイトカイン産生を示しました。モジュラー型細胞は長期間機能を維持し、数週間後に新たなFab投与で再活性化できました。
研究チームはGA1CARを放射線療法と組み合わせる方法や、体内でより長く持続し腫瘍に届きやすいFab断片の作製を検討しています。本研究はScience Advancesに掲載され、シカゴ大学の放射線・細胞腫瘍学部門と生化学・分子生物学部門の共同研究として行われました。Kossiakoffはファージディスプレイ技術を用いてGA1およびFabの変異体を開発しました。資金はSearle Foundation(Chicago Biomedical Consortiumの後援を通じて)、Ludwig Foundation for Cancer Research、およびNational Cancer Instituteから提供されました。
難しい単語
- 浸潤 — がん細胞が周囲組織に入り込むこと浸潤不足
- 結合する — 二つ以上が互いにくっつくこと結合します
- 抗体断片 — 抗体の一部分で特定標的に結合する部分抗体断片(Fab), Fab断片, Fab
- 循環半減期 — 血中の物質が半分になるまでの時間
- モジュラー型システム — 部品を分けて組み合わせる設計方式
- 再活性化 — 一度止まった機能を再び働かせること
- 抵抗性 — 治療などが効きにくくなる性質
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ディスカッション用の質問
- GA1CARのようにFabの投与で活性化を制御できる仕組みは、治療の安全性にどのように寄与すると考えますか?具体的な理由を挙げて説明してください。
- Fabの循環半減期を長くした場合と短くした場合で、それぞれどのような利点と欠点がありそうですか?
- 放射線療法とGA1CARを組み合わせるとすれば、どのような効果や課題が考えられますか?理由と共に述べてください。