1970年代に持ち帰られた月の土(レゴリス)には、水や二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、窒素といった揮発性物質が含まれていることが分かっています。ある成分、特に窒素は太陽風だけでは量を説明できない点が課題でした。
今回の研究はロチェスター大学のチームによるもので、論文はNature Communications Earth and Environmentに掲載されました。研究では高度な計算機シミュレーションを用い、「初期の地球」と「現代の地球」という二つのシナリオで粒子の移動をモデル化しました。
シミュレーション結果では、現代の地球シナリオで磁力線に沿った粒子移送が最も効率的でした。この「じょうご状の効果」によって、長期間にわたり微量の地球大気が月へ運ばれた可能性があります。これにより月が地球大気の長い化学記録を保持していることが考えられます。
難しい単語
- 揮発性物質 — 容易に気体になりやすい化学物質
- レゴリス — 月や惑星の表面にあるゆるい土
- 窒素 — 元素の一つで大気に多く含まれる気体
- 太陽風 — 太陽から放出される粒子と場の流れ
- 計算機シミュレーション — コンピューターで現象を再現する方法
- 磁力線 — 磁場の向きや形を示す想像上の線
- 移動 — 物や粒子がある場所から別の場所へ動くこと移動を
- 化学記録 — 過去の化学状態が残っている情報
ヒント:記事中の強調表示された単語にマウスオーバー/フォーカス/タップすると、その場で簡単な意味が表示されます。
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